開幕勝利(5年ぶり)

2020YBCルヴァンカップ グループステージC 第1節
サガン鳥栖 0-3 北海道コンサドーレ札幌
得点者:札/ジェイ(14’)、福森晃斗(81’)、鈴木武蔵(90’+2’) 鳥/なし

昨季はあと一歩のところまで近づきながらも、PK戦で涙を呑んだルヴァン杯。今年こそ頂点に立つべく、北海道コンサドーレ札幌は2020年のルヴァン杯に臨みます。

21歳以下の選手を最低1人はスタメンに入れることを義務づけるなど、もともと若手育成のための大会という意味合いが強い大会ではありますが、東京五輪の影響で、開幕がリーグ戦の開幕1週間前という変則日程となったことから、各チームともプレシーズンマッチ的な意味合いとして捉えるチームが多いのか、全体を見渡しても、「ベストメンバー+U-21」という構成で臨んだチームが多かったようです。

これまでの札幌は「得点もするけど失点もする」出入りの激しいサッカーをしており、それが安定しない成績に現れてしまっていましたが、3年目を迎えるミシャ体制ではそれを克服すべく、「守備の強化」を念頭にチーム作りを進めているとのこと。

しかしながら、これまでのテストマッチでは守備の強化どころか、下位カテゴリのチーム相手にも大量失点、もちろん同クラスのチームにも普通に失点する有様。行きつけの居酒屋で「お酒が進む新メニュー」ってのを頼んでみたら、お酒よりもご飯が欲しくなった時の気分になったような、いまいち「そうじゃない」気分ですが、川崎戦で景気よく失点を重ねる姿を目の当たりにしたので、ルヴァン杯はリーグメンバーへの最終試験みたいな意味合いで、控え中心になるのかなと思ったりもしたんですけどね。蓋を開けてみればガチメンバー。オレ最高に無能。

ガチメンバーといっても、MF深井一希がハムストリングの肉離れで戦線離脱を余儀なくされたため、代役として白羽の矢が立ったルーキー高嶺朋樹がスタメン入り。U-21枠は檀崎竜孔が右ウィングバックで入りました。アンデルソンロペスやルーカスフェルナンデスのブラジル人コンビはベンチ外、キムミンテもベンチスタートとなっています。

キャンプ地である熊本から鳥栖へは、北海道からよりは移動が楽とはいえ、長いキャンプによる、心身ともに充分なお疲れモードなのは毎年のこと。やはり身体は重そうですし、何より判断のスピード低下がいかんともしがたい感じ。身体が疲れているから判断力が鈍るのか、それとも判断力が落ちてるから身体が着いてこないのか、鶏が先か卵か先か、オレとしてはひよこが先であって欲しいという感じですが、とにかくチーム全体の出来としては70%にも満たないでしょう。去年の開幕戦もこんな感じでした。

鳥栖は前線に京都から加入した小屋松、U-18から昇格した本間、松岡の3人がとにかく危険で、控えメンバーなのかと思ったらおそらくこれがベストメンバーなんでしょうね。主力が抜けて台所事情は厳しい中でも、新戦力に目処が立ったと言えるのではないでしょうか。特に小屋松は今年京都サンガFCから加入したばかりにもかかわらず、もう6年くらい鳥栖にいるような完璧な鳥栖顔で、来るべき人が来たと言えるかも知れません。鳥栖顔って何? って言われても困るんですけどね。わかるでしょ、鳥栖顔。

しかし、それでも勝ったのは札幌。前半14分、奪った最初のコーナーキックをジェイが頭で合わせてゴール。その後はホームの鳥栖にペースを握られるも、後半36分には福森晃斗がGKの意表を突くちょこざいなフリーキックを蹴り込んで追加点。アディショナルタイムにも日本代表FW鈴木武蔵が、韓国代表GKクソンユンのパントキックを、自慢のスピードと身体能力を生かして無理矢理ぶち込み、3-0で勝利。流れが良くない中、得意のセットプレイとごり押しスタイルで貴重な勝利を飾った札幌は、次週のリーグ開幕に向けて及第点のスタートとなりました。

今季から取り組んでいると言われるハイプレスが効いているとはお世辞にも言えない…というか、川崎とのテストマッチでもそんなシーンを見た記憶がないのですが、悪いときには悪い時なりに「ストロングポイントで殴ってれば、相手はそのうち泣く」というのが今年も有効となったことは、ひとつの収穫と言えるでしょう。長いシーズン、「悪いときには悪いときになりに戦える」というのは、上位を目指す上で重要なことですからね。特にセットプレイは、キャンプのテストマッチではそこまで特に力を入れてなかったでしょうから。

というわけで試合全体としてはそんな感じですが、この試合目を惹いたのが、元気に中盤を駆け回ったのがルーキー高嶺朋樹でした。筑波大学では「狂犬」と呼ばれるほどのアグレッシブな守備に定評がある選手でしたが、その言葉通り中盤でプレッシャーをかけるだけでなく、場合によってはガッとボールを奪取する様は、まさに狂犬。「ダンプカー」深井一希との共演が今から楽しみですが、ユース時代の彼を知るサポーターは「U-18の頃はあんなんじゃなかった」と口を揃えているので、行方不明になってた愛犬が帰ってきたら野良犬のボスになってたみたいな感じなのでしょうか。

今年は「ハイプレス」という言葉が一人歩きをしている感がありますが、ミシャはもう一つ「1対1の守備」のことも言っています。意識高い戦術用語では「デュエル」というのでしょうかね。1対1の守備で勝てれば押し込まれることも減るわけで、そういう意味では高嶺朋樹の狂犬守備は、今年のミシャサッカーに合致しているのではないかと思います。交代前に見せた、ワンワン言いながらガブリと噛んでシュートまで持って行ったのはまさに真骨頂でしょう。なお、せっかく奪ったボールを狙い澄まして打ったシュートが枠を外して悔しがる姿は、イソップ童話の犬を思い出して微笑ましかったです。

あと、膝の怪我で昨シーズンをまるまる棒に振った駒井善成が交代出場。大卒ルーキーのネコタクくんこと金子拓郎も交代出場でいい動きを見せておりました。まだ日本代表MF田中駿汰も控えていますから、すっかり層が厚くなりましたね。開幕から地元に戻るまでの期間をうまく乗り切って、昨年以上の成績を目指したいところですね。