2013年J2第34節
コンサドーレ札幌 1-0 V・ファーレン長崎
得点者:札幌/レ・コン・ビン
長崎/なし
ずいぶん長いこと間が空いてしまいましたが、とりあえず生きています。一応忘れてたりはしません。
栃木SC相手にアウェイで3点取っておきながら4失点食らって痛い敗戦を食らい、プレーオフ圏内に届きそうで届かなさそうで、どうにももどかしさばかりがつのる札幌。「見えそうで見えない」のは好きですけどこういうのは嫌いです。そんな札幌がホーム厚別に迎えるのは、現在勝点56で4位につけるV・ファーレン長崎。J2参入初年度ながら、堅い守備をベースに勝点を重ねて16勝9敗8分は立派の一言。札幌も15勝と勝ち数の差は1つしかないんですが、札幌も場合同じだけ負け試合があるのが、現在この順位に甘んじている大きな理由です。何度も言っていることですが、せめてもう少し負けを引き分けにできていればもう少し上の順位に行けてたのになぁと。なんともいたましいことではありますが、まぁ過ぎたことは仕方がありません。あの時こうしていれば良かったなんて後から言っても始まらないですからね。合コンで思わずモビルスーツについて熱く語ってしまい女の子にドン引きされたことを悔やんでも遅いのですよ!
さて、先ほども書いたように長崎の特徴と言えばまずその堅守。ここまでの総失点数33は、ヴィッセル神戸の32失点に次いで2位です。反面得点数はリーグ11位の40点とそれほど多くありません。ただそれでこの順位にいるということは、「少ないチャンスをものにしている」ということでしょう。得点はリーグ6位の49点と案外取っているのに、失点はリーグ11位の41の札幌にとっては、まぁいかに相手に隙を見せずにチャンスを作るかが鍵になるでしょうか。第10節のアウェイ戦では0-0と微妙な結果に終わっています。
何にせよ、上位を追撃するためにはここで長崎を叩く必要があるのですが、ここにきて札幌にやや暗雲が立ちこめてきました。膝の故障で長く戦列を離れていた深井一希が戻ってきたものの、今度はここまでチームの大黒柱として活躍してきたMF上里一将が右膝の十字靱帯断裂という重症を負い、今期絶望となってしまいました。栃木戦で脇腹を痛めたらしい河合竜二も欠場(もっとも河合さんは累積警告ツモでどのみち出られず)と、なかなかの逆境ナインっぷり。そして、ここのところ多少は安定感が出てきたと思ってたのにいつのまにやら元に戻っていたGK杉山哲に代わって曵地裕哉がスタメン出場。曵地自身は5月3日の京都サンガFC戦で今季既にスタメン出場を果たしていますが、杉山からポジションを奪うまでには至らなかっただけに、この試合に賭ける意気込みは相当なものだと思います。結果としてこの試合を無失点に抑え、勝利に貢献したわけですが、残念ながらこの試合の話題は全てあの人に持って行かれました。はい。ベトナムの英雄レ・コン・ビンです。
7月に加入し、8月11日の横浜FC戦でベンチ入りをするものの、言葉の問題や守備面での課題もあり、ここまでの出場は9分止まり。しかしそのわずかな出場機会でも愛媛FC戦でコーナーキックからフェホのゴールをアシストするなど「英雄」の片鱗を見せていた中での初のスタメン出場、そこでしっかり初ゴールを挙げるのですから大したものです。
前半15分、3バックの弱点であるサイドのスペースを狙った砂さんのスルーパスに反応した内村がボールを抑えると、上がってきたマエシュンにパス。ボールを足もとに置いた状態のマエシュンにうかつに飛び込むのは自殺行為なので、相手も少し距離を開けて守ることが多いのですが、ここでマエシュンはそのディフェンスをあざ笑うかのような浮き球を裏へ。このボールにすっ飛んでいったのが突貫サイドバックこと上原慎也。榊翔太とはまた違った種類の犬っぽい飛び込みで中へ折り返すと、すっかりボールサイドに寄せられてしまった長崎のDFは、ファーサイドでフリーとなっていたレ・コン・ビンがドンピシャのダイビングヘッドでシュートを叩き込むシーンを、黙って見守ることしかできませんでした。見事な連携の素晴らしいゴール。あそこまで緩急織り交ぜて崩しきった攻撃も見事ですし、決して簡単なボールではないクロスに合わせたレ・コン・ビンも見事。「ここに来る」と感じてないと決してできないシュートですよね。それはいいんですが、初ゴールを決めて喜びを爆発させたレ・コン・ビン、思わずユニフォームを脱いでしまい、イエローカードを受けてしまいます。これがひとつのポイント。
先制後も押し気味に試合を進める札幌でしたが、落とし穴は案外いろんなところに潜んでいるものです。「どうぶつの森」でも落とし穴見えてるのにハマることってありますもんね。なんでわかってて突っ込むかな俺。まぁそんなわけでこの試合の落とし穴は前半36分。自陣でボールを受けたレ・コン・ビンがプレッシャーをかけに来た相手選手を交わそうとしたものの、ボールを引っかけてしまい奪われてしまいます。そのまま突破を図る相手にまずいと思ったか、とっさに手を出して相手を倒してしまいます。これが相手陣内であればまだ助かったかもしれません。しかし自陣でボール取られて、抜け出されればピンチのところで後ろから手を使っちゃったら、まぁカードは出ますよね。で、レ・コン・ビンはゴールの際にユニフォームを脱いでイエローカードをもらっています。なので、2枚目のイエローで退場。
普段選手が退場するときは判定そのもの(あるいは全体のレフェリング)に疑問符がつくようなことが多いのですが、これに関してはぐうの音も出ない納得の退場。既に1枚もらっているのにカードもらうプレイしちゃった、というのはまさしくどうぶつの森で見えている落とし穴にハマるのと同じであり、日越両国の歴史に残るJリーグ初ゴールと初退場を同時にやってのけるとは、さすが英雄、そこにしびれる憧れる。どうせだったら逆のほうがよかったんですけどね。既に1枚もらっているレ・コン・ビンがJリーグ初ゴールを決め、歓喜のあまりにユニフォームを脱ぎ、主審が申し訳なさそうに黄色いカードと、次いで赤いカードを出してそのままおさらばという。まぁ勝ったから言えるんですけど。
そんなわけで前半から10人になってしまった札幌。まぁ幸いだったのが、退場したのはおそらくはどちらにしてもフル出場させるつもりではなかったはずのレ・コン・ビンで、システム的な変更のみで対応できる範囲のポジションだったことでしょう。さすがに相手の攻撃に晒される時間が増えたものの、1人減っても割と混乱なく札幌も対応し、前半はリードのまま終了。
後半、札幌はマエシュンを下げて荒野拓馬を投入。マエシュンは最近頑張っているとはいえけっして守備は得意ではないですし、頑張れば頑張るほどこっちもカードもらいそうですからね。守りを主眼にして隙あらばカウンターという作戦でしょう。人数的には1人少ないのが不利なのは確かですが、ただ札幌には前線に内村がいますからね。彼が張っているだけで相手はうかつにラインを上げられなくなるので、札幌としてはバランスを崩される心配が少なくなるのは大きかったと思います。
そんな感じで後半の札幌は当然守る時間は長くなったものの、時折カウンターから相手ゴールを狙うなど、ほぼ想定通りの試合を運び。もちろん危ないシーンはありましたし、逆に惜しいというかこれが決まってたらレ・コン・ビンのゴールと今節ベストゴールを争ったであろううっちーの芸術的なミドルシュートもありましたが、残念ながら相手GKの好セーブに遭い得点ならず。
26分には深井一希に代えてフェホを、30分には砂さんに代えて櫛引一紀を入れるという、よくわかるようなわからないような選手交代を見せた財前監督、おそらくは「かずき」を2人ピッチに入れないような配慮でしょうか。フェホの投入は普通に長崎へのいやがらせだと思いますけど。
まぁそんな交代が奏功したのか、長崎の攻撃に割と工夫がなかったも幸いし、シュート2本に抑えることに成功。数的不利の中、全員が集中して守り逃げ切りに成功。ベトナムの英雄のJリーグ初ゴールと初退場に花を添える勝利となりました。