2019YBCルヴァンカッププレーオフステージ第2戦
北海道コンサドーレ札幌 2-1 ジュビロ磐田
得点者:札/鈴木武蔵(5’)アンデルソンロペス(10’) 磐/ロドリゲス(23’)
アウェイでの第1戦で理想的な勝利を挙げた札幌は、負けたとしても0-1までなら勝ち抜けることができるという、かなり有利な状況でホームでの第2戦を迎えました。
それだけに、この試合にどう入るかというのは難しかったと思います。余裕のある状況というのはともすれば油断にもつながってくるわけで、入り方を間違えると痛い目を見る可能性があります。我々だってお給金入ったからと余裕ぶっこいていたら、いつの間にかお財布からお金が消えているなんてこと、よくありますもんね。
第1戦ではかなりメンバーを落としてきた札幌ですが、この試合では3バックは進藤、キムミンテ、福森。前線もアンデルソンロペスと鈴木武蔵を並べ、メンバーの半分をレギュラークラスで固めてきました。これはつまり明確に「早いうちに勝負を決めろ」というメッセージに他なりません。週末にリーグ戦が控えるレギュラー組は、できれば早いうちに交代させておきたいでしょうし、そのためには余裕で交代させられる状況にしておく必要があります。
で、開始早々の前半5分、コーナーキックからの流れから、アンデルソンロペスの無理矢理気味なクロスボールを鈴木武蔵が難しい体勢ながらもうまく蹴り込んで早速先制点をゲット。さらに10分には相手のハンドで得たPKをアンデルソンロペスが決め、注文通り2点のリードをゲットしました。
この時点で2戦合計のスコアは4-1。磐田は少なくともあと3点を取らなければいけなくなりました。これで前半のうちにあと1点を取れれば、磐田が逆転するためには4点が必要となり、まぁ磐田に取ってみれば、この試合そこまで無理して点を取りに行くより、適当に終わらせて残留争いをしているリーグ戦に集中したほうがなんぼかまし、という結論になってもおかしくありません。
その追加点の機会は、意外に早くやってきました。前半19分、DFを背負いながら縦パスを受けたアンデルソンロペスが反転して、入れ替わった時に足を引っかけられて、またしてもPKを獲得します。
2点目のPKでは、鈴木武蔵がゲットしたPKをアンデルソンロペスに譲っていましたので、今回アンデルソンロペスがゲットしたPKを武蔵に譲るんだろうと思っていたら、蹴るのは、岩崎悠人でした。いや、実際にアンロペは武蔵にPKを譲ったらしいのですが、それをさらに武蔵は岩崎に譲ったようです。
今季京都サンガFCから移籍してきた岩崎ですが、トゥーロン国際大会では準決勝と決勝を含む3試合にスタメン出場、チリ戦では2ゴールを挙げたものの、チームではここまでリーグ戦でのスタメン出場はなし。最近では2列目の交代のファーストチョイスを大学生のネコタクくんに奪われている状況です。
カップ戦でこそ全試合スタメン出場していますが、ここまでゴールなしで、こちらでもすでに1ゴールを挙げているネコタクくんの後塵を拝している実情では、ヘッドハンティングされたはいいけどいっこうに契約が取れない営業マンみたいに、本人としても相当の焦りはあるんじゃないかと思います。
そこで突然沸いてきたPKキッカー。岩崎の心情はいかなものだったでしょうか。「確かに点は欲しい。欲しいけど…こんな形でもらっていいのか…? 同情か…? 同情するなら点をくれ。同情するなら点くれよ! いやくれようとしてるじゃん…。でも決めるならちゃんと実力で決めたいもんあ…。やっぱ断るか…でもここで断ったらむっちゃん気を悪好くするよな…目が笑ってないむっちゃんめっちゃ怖いしな…。仕方ない、蹴るか…」という感じだったのかもしれません。そりゃ蹴りますよ。蹴るしかないですよ。
トゥーロン国際大会でのメキシコ戦では、PK戦で冷静に隅に決めてましたので、岩崎自身PKは決して不得意ではないと思うのですが、うまく行かないときはとことん行かないもんで、岩崎が蹴ったボールは無情にもゴールポストに阻まれます。
これで流れは変わってしまったか、その直後、今度は札幌のペナルティエリア内で早坂がハンドを取られてPKを献上。これをロドリゲスに決められて1点差に。
これでトータルスコアは4-2とまだ依然として札幌が有利ではあるのですが、2つめのPKを獲得した時、だいぶ空気が緩んでしまったように見えましたからね。いったん抜けた集中力を再度立て直すのって、けっこう大変です。人生たまには息抜きは必要ですけど、試合中は抜いちゃいけないですね。息抜きの合間に人生やってるオレに言われたくはないでしょうが。
そんな気もそぞろな札幌に対し、磐田はまだ60分以上を残す段階で1点を返し、「あれ? けっこういけるんじゃね?」ムード。勢いの差は明らかです。札幌もチャンスはいくつかあったのですが、クロスにうまく入ってきた岩崎のシュートがGKに防がれたりと、やっぱり「持ってない」っぷりを発揮したに留まり、前半は2-1で終了。
さぁ、こうなるとリードしているとはいえ札幌も困ったもの。チームの目論見としては、前半で勝負をつけてしまって、後半の頭からレギュラー陣を交代させたかったでしょうが、この流れではなかなかそうはいきません。
一方で、週末のリーグ戦を考えるとあんまり引っ張ることもできませんから、後半の早い時間で1点でも取れれば…というところだったでしょうけど、ペースはやはり磐田のままで、結局ケガ明けの福森とアンデルソンロペスは後半15分過ぎで諦めざるを得ない状況に。その後も交代出場のネコタクくんがうまくゴール前に入り込みながら、狙い澄ましたようにゴールを外すなど、プロ入り前からすでに札幌の2列目にだいぶなじんできたようです。
磐田もさすがにリーグ戦を考慮してアダイウトンやムサエフを下げるものの、札幌は中盤で磐田を止めることができず、ズルズルとラインを下げられ、「洗練されたダヴィ」ことロドリゲスの大暴れを許してしまいます。残り10分はほとんど磐田の時間。試合開始当初のあの余裕はどこに行ったんでしょう。ちょっとなんかわかりやすいくらいに少年マンガの悪役(それも小物)な感じです。
札幌はあと1点までなら取られても大丈夫ではありますけど、すでにそんな余裕なんてない状態。この完全に腰が引けた状態で1点取られてしまったら、流れ的に相手の奇跡のお膳立てをしてしまいかねません。
で、洗練されたダヴィ、略して洗ダビにポスト直撃の危ないシーンを作られたものの、なんとか逃げ切りに成功。札幌は22年ぶりのベスト8進出を決めたのでした。